いまは「共働きでないと中学受験させられない」
ところがだ。今、中学受験のメインは共働き家庭である。妻もフルタイムで働き、それなりに稼いでいる層だ。そうしないと私立中学に通わせられるだけの経済力が得られないからだ。そして、そういった共働き世帯は「学童代わり」として塾に子どもを入れる。塾に入れておけばとりあえず安全だし勉強もさせてくれるからだ。
もちろん、共働き家庭でも、子どもを難関校に入れたいと願う層もいる。自分自身が学歴を得たことでキャリアを築いた人たちは、高い学歴を与えることが子どもの将来の経済的な安定に繋がると信じているからだ。
しかし、SAPIXは授業時間も短いし、家庭での学習がメインなので、そういった学童代わりニーズにはマッチしないし、そもそも共働き家庭には合わない。
そのあたりを把握していない層が入れてしまうから不満も出てくるわけだ。小学校の後半という多感な頃に3年間子どもが通う場所だ。ちゃんと塾の中身を見て、自分たちと合うか合わないかを考えてから塾を選ぶべきだろう。
今回はSAPIXの隆盛の理由と中学受験をさせる家庭の変化について分析した。首都圏の専業主婦が子どもの受験に全力で取り組んだ時代があったのだ。それが現在、中学受験をさせる家庭は共働きになっているので、さまざまなミスマッチが起きているように見える。
次回は、そのミスマッチの原因として、中学受験家庭生徒の層が変化していることについて説明をしたい。かつては中学受験は小学生のうち、上位学力20%が参加するといわれた。しかし、それが変化してきているのだ。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)では小説『ボリュゾっていうな!~ギャルママが挑む“知識ゼロ”からの中学受験ノベル~』を連載。