「もうすぐ60才。これまで必死に働いてきた分、定年退職したら夫婦ふたりでなるべくのんびり、悠々自適に暮らしたい」──そう考える人は少なくないが、実現できている人はそういない。
人生100年時代を迎えたいま、60才はおろか、70才を過ぎてからもバリバリ働くのが当たり前だ。昨年発表された総務省の調べによると、65才以上の就業者数は912万人と過去最多を更新。19年連続の増加で、その数は10年前の約1.5倍にものぼる。就業率を見ても、65~69才は50.8%、70~74才は33.5%と、70才以上の「7人に1人」は“現役”なのだ。
その理由にはもちろん「お金」もある。だが50才以上に特化した求人を取り扱うシニアジョブ代表の中島康恵さんは「それだけではない」と語る。
「収入も1つの大切な理由ですが、シニアはそれ以外にも、やりがいや社会とのつながりを求めるかたも多い。仕事によって体や頭を動かし、健康維持を目的の1つに求職するシニアもたくさんいます」
しかし、神奈川県で1月から清掃員として働き始めたAさん(66才女性)はこう話す。
「定年まで事務員として働いていましたが、実は若い頃からずっとアパレル業に憧れがあったんです。求人情報誌を見て応募してみたものの、どこに行っても“未経験者の採用は難しい”と断られっぱなし。
半ばやけくそでいまの仕事に就きましたが、新しいことを覚えるのは大変で、お給料の割に拘束時間が長く、体力の消耗も激しい。もっとよく探せばよかったと後悔しています」
高齢者の就業率が右肩上がりのいま、シニア向け求人は多数あるが、だからこそ選び方を間違えると“働き損”にもなりかねないのだ。