年金受給を繰り下げても得にならないケースも
「それなら、働いている間は年金を繰り下げれば回避できるうえ、将来もらう年金も増やせて一挙両得」と思ったら大間違いだ。
「受給を繰り下げたところで調整は避けられないばかりか、繰り下げによる年金の増額もなくなります。仮に給与が48万円で年金が10万円とすると、超過した10万円の半分の5万円が差し引かれることになります。そこで年金を繰り下げたとしても、差し引かれるべき5万円の分は、繰り下げによる増額の対象にならないのです。
かといって、年金を減らされないように48万円の給与を38万円に減らすのはあまりにも馬鹿げている。10万円の年金を5年繰り下げられれば42%にあたる4万2000円増となり、年間で約50万円の増額になります。ですがそのために毎月の給与を10万円減らすと、年収は120万円も減ることになります」
その場合は、給与を退職金に回してもらう方がよほど得だと、北村さんは言う。
「60才で退職金が出る場合、退職後の継続雇用の給与が24万円なら、それを21万円にし、残りの3万円を退職金に回してもらうよう相談してみてください」
もちろん応じてくれるかどうかは職場によるが、相談する価値はある。また、もし受け入れられなかったとしても、職場から直接仕事を請け負う個人事業主になる手がある。
「そうすれば、厚生年金はなくなりますが、給与所得によって年金がカットされるのは防げます。より安全なのは、少ない収入で厚生年金に加入しながら、会社員と個人事業主の“二足のわらじ”を履くこと。確定申告が必要になるなど面倒もありますが、収入を増やす方法としては有効です」