能登半島地震により、石川県の志賀原子力発電所では変圧器の配管が壊れるなど、様々なトラブルが発生した。そのうえで経営コンサルタントの大前研一氏は「余波はそれだけで終わらない」と指摘する。元原子炉設計者でもある大前氏が懸念するのは、「柏崎刈羽原発」への影響だ。
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能登半島地震による石川県の被害は死者240人、負傷者1181人、安否不明者14人、住宅被害4万9440戸に上り、まだ多くの地域で断水や停電が続いている(2月2日14時時点)。
被災者の救済と被災地の復旧・復興が急がれる中、私が元原子炉設計者として注視していたのは北陸電力志賀原子力発電所だ。今回の地震で被災してリスクが露呈した同原発は、もはや廃炉にするしかないと思う。
ただし、能登半島地震の余波はそれだけで終わらない。原発関係者にとって今回の最大のダメージは、7基の原子炉がある世界最大の柏崎刈羽原発も再稼働できずに永久停止(=廃炉)となりかねないことだ。
福島第一原発事故後、東京電力は柏崎刈羽原発の安全対策に1.2兆円を注ぎ込んで、海抜約15mの高さの防潮堤や防潮壁などを設置し、原子炉や使用済み核燃料プールの冷却機能を強化するため海抜約45mの高台に貯水容量約2万トンの淡水貯水池も造成した。こうした対策は私から見ても福島第一の教訓を反映したものであり、再稼働を認めるべきだという意見になる。
だが、能登半島地震で柏崎市と刈羽村は震度5強を観測した。柏崎刈羽原発に異常は確認されなかったが、周辺地域では道路に無数の亀裂が入るなど地震の影響が少なくなかった。
柏崎刈羽原発は、テロ対策上の重大な問題が相次いで見つかり、原子力規制委員会が東京電力に対して事実上運転を禁止する命令を出していた。
しかし昨年末、規制委は「自律的な改善が見込める状態であることが確認できた」として運転禁止命令を解除した。今後は再稼働に向けた手続きが再開されることになり、地元自治体の同意が焦点となる。