親がやるか、子がやるか
もちろん、“曾祖父の名義のまま”といった事例に限らず、親が亡くなって子が不動産を継ぐなどの場合でも、相続登記が必須となる。
野谷氏によれば、相続登記は法律に定められた手順が求められるので、相続発生後に手間を減らす方策はないという。一方、「相続が発生する前」、つまり親世代が存命のうちなら、手間を減らす方法が複数ある。主な選択肢は右ページの表にまとめた通りだ。
「ひとつは『遺言書の作成』です。遺言書で不動産の取得者が定まっていると、必要書類は死亡者と取得者の戸籍謄本、住民票だけで済みます。死亡者の出生までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍・印鑑証明書は不要になるし、遺産分割協議書も必要ありません」(野谷氏)
遺産分割協議書がなくていいということは、相続人全員の署名・実印の取得も不要になって、手間は大幅に削減される。
ただし、「相続登記」の手間を減らす方策について「親世代が積極的に発案・実行する事例はほとんどない」(野谷氏)という。
「親世代は安定性を求める傾向が強く、手間暇かけて現状を変更することに否定的です。事前に対策を講じるには子世代が働きかけなくてはなりません。“転ばぬ先の杖として準備しよう”といった具合に、親に信用してもらえるような言葉を選んで提案したうえで、“準備は子供たちでするから”などと親に手間をかけさせずに進めることが大切です」(野谷氏)
話を切り出す際、“4月に制度が変わるらしいけど……”とルール変更を逆手に取ってきっかけとする方法もありそうだ。
※週刊ポスト2024年2月23日号