相続で最もトラブルになりやすいのが家や土地などの「不動産」だ。うまく使えば節税になる一方、ひとつ間違えると争いごとや煩わしい手続き、そして金銭的な負担を招くことになる。
死亡者全員の出生から死亡までの戸籍を取得する必要
今年4月1日、土地や建物の相続をめぐるルールが大きく変わる。「相続登記の義務化」だ。
不動産の相続権があることを知ってから3年以内に相続登記をしないと、原則として10万円以下の過料が科されることになる。土地や建物を相続したら、親など被相続人の名義から自分の名義に書き換えなくてはならなくなるのだ。
今回の新ルールは、今年4月以降に相続が発生したケースだけでなく、それ以前に相続された不動産にも適用される。相続登記せずに放置してきた不動産を持っている人は、2027年3月末までに登記を行なわなくてはならない。
「これまでは相続登記をしなくても罰則がなかったため、名義変更されずに放置されている不動産が数多く存在します。義務化を前に、私たちの事務所にも相談の問い合わせが増えています」
そう説明するのは司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏だ。長年にわたり相続登記されないまま放置されてきた不動産の名義変更には、多大な手間がかかるのだという。野谷氏が続ける。
「曾祖父や曾祖母の代の名義のままになっている不動産だと、手続きが非常に面倒になるため途中で挫折してしまう人も珍しくありません。相続登記にはまず、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本の収集が必要です。本籍地が何度も変わっている人だとそれだけでも十分に手間ですし、“曾祖父名義のまま”といったケースでは、曾祖父から相続権を承継した人たちも死亡していることが多い。そうした死亡者全員の出生から死亡までの戸籍を取得する必要が出てくるのです」