2019年に「老後30年間で約2000万円が不足する」として国民的議論を巻き起こした「老後資金2000万円問題」から5年が経とうとしている。「日経平均がバブル期以来の高値更新」「新型コロナ収束で経済復調」といった景気のよいニュースがあっても、老後のお金の不安は拭い切れていないどころか、ふくらみ続ける一方だ。
自分が死ぬまでの間にお金が尽きないようにするためには、どうしたらいいのか──人生100年時代を迎えたいま、体の健康寿命を延ばすとともに「資産寿命をいかに延ばすか」を考えることが、私たちに課せられた最大で最後の課題となっている。
“お金の寿命”は100才を目指す
日本人の平均寿命は女性87.09才、男性81.05才。日本が世界トップクラスの長寿大国であることは間違いない。だからこそ、お金が尽きるまでの「資産寿命」が実際の寿命よりも早く訪れる不安があることも事実だ。
国士舘大学政経学部兼任講師で早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員、経済キャスターの鈴木ともみさんは「資産寿命を延ばすもっともシンプルな方法は、できるだけ長く働くこと」と話す。だが当然、最期のときを迎える直前まで元気に働けるわけではない。
「健康上問題なく日常生活を送ることができる年齢を表す『健康寿命』は、女性75.68才、男性は72.68才で、亡くなるまでの寿命とはギャップがあります」(鈴木さん)
では、自分の資産を何年“延命”すればいいのか。前出の健康寿命から考えると、女性の場合は人生の最後の約12年間は、働かなくとも暮らせるだけのお金を用意しておく必要があるということになる。だがそれはあくまでも“最低限”でしかない。75才より前に働けなくなったり、病気になって医療費がかさむ可能性もあるうえ、いまや平均寿命を超えて90才、100才まで生きる人は少なくない。