貧困や紛争、気候変動、教育の不平等にジェンダー差別など、世界を取り巻く問題は複雑化している。これらの問題を解決して、地球上の“誰ひとりも取り残さない”ためにできることをしよう──そんな大義を掲げて地球規模で大きなうねりとなっているのがSDGs(持続可能な開発目標)だ。しかしその行動は、果たして本当に世界のためになっているのだろうか。いま注目を集める気鋭の経済思想家・斎藤幸平さんが「SDGsの誤謬」を見抜く。【全3回の第1回】
「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「ジェンダー平等を実現しよう」「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」「働きがいも経済成長も」「気候変動に具体的な対策を」──これらは17項目からなるSDGsの目標の一部だ。2015年の国連サミットで採択され、経済を持続可能な形で発展させてよりよい世界を実現することを目指している。
SDGsの前身となるのが、2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)。環境の持続可能性の確保や貧困と飢餓の撲滅など8つの目標が掲げられ、2015年に達成期限を迎えた。
MDGsの成果は一定程度あったものの、気候変動や貧困問題、経済格差の拡大など依然として多くの問題が残されたため、“持続可能な世界”を目標として新たに策定されたのがSDGsである。
国連でのSDGs採択を受けて、日本政府も国内での目標達成に向けて全国務大臣を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、2016年には、SDGsの実施指針を作成。これを受けて、各企業も競うようにSDGsに取り組んでいる。
たとえば飲料メーカーでは、パック飲料のキャップや注ぎ口に再生可能なバイオマスプラスチックを使用し、飲食店においてはプラスチックストローを廃止する流れが一般化された。ホテルのアメニティーグッズも次々と廃止されている。2020年にスタートしたレジ袋有料化で私たちの生活にマイバッグは欠かせないものとなり、マイボトルを利用してゴミを減らし、衣類をリユースするなど、いち消費者としてSDGsを意識している人も増えている。