「コモン」という共有財の概念
私たちが“脱成長”を実現するには、資本主義を超えるような社会に移行するしか方法はない。
そこで着目するのは、「コモン」という共有財の概念だ。コモンとは水や食料、エネルギー、森林など人々の誰しもが必要とする財産のことを指す。
「電気や水道などの社会インフラや、森林や公園のような自然環境は、本来はコモンとして、社会の人々に共有されて管理されるべき財産であり商品化すべきものではありません。しかし、資本主義はコモンさえも民営化して金儲けの道具にするので、貧しい人は生活に必要な最低限の基盤さえ失われてしまう。
コモンを人々が民主的に共同管理するようになれば、生活に不可欠なサービスが確保されます。人々は過剰労働の圧力から解放されるようになり、脱成長が可能になるのです」
海外ではコモンの共同管理という動きがすでに進んでおり、アメリカではカナダとの国境にある五大湖を「貴重な飲料水であり重要な自然資源」として両国が「生命地域」となって保全していく協定が結ばれた。日本でも同様の動きがある。
「滋賀県・琵琶湖の水が生命地域の考え方で管理されています。古くから琵琶湖は滋賀や京都、大阪の人々にとって欠かせない水源であり、地域を超えた共有の財産として、水質や生態環境が管理・維持されてきました。こうした自治体の壁を越えた生態系を守る取り組みは、気象災害が増えていく中、ますます重要になるでしょう」