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経済評論家・山崎元さんが息子に送った最後の手紙「貴君はこれからどうしたらいいのか」「親孝行は、18歳の時点でもう十分に済んでいる」

『経済評論家の父から息子への手紙』は「転職」などキャリアについてだけでなく「モテ」「酒の飲み方」までテーマは多岐にわたる

『経済評論家の父から息子への手紙』は「転職」などキャリアについてだけでなく「モテ」「酒の飲み方」までテーマは多岐にわたる

貴君の今後について

 貴君はこれからどうしたらいいのか。

 こちらから指示したり頼んだりしたいことは何もない。好きなようにやってくれていい。

 それがいいと思えば大学を中退してもいいし、学生結婚して孫でも連れてくるなら大変面白いし、才能があるかどうかに疑問があるけれども詩人だのアーティストだのを目指してもいい。革命でもいい。仮に、やったことが違法でも、その意図が理解できれば、私は息子の味方だ。

 父親である私は、私自身のやりたいことをやればいいし、子供である貴君に引き継いで欲しいと思っている理想なり事業なりがあるわけではない。貴君は「父の思い」にこだわる必要は全くない。

 貴君が将来何をするかは興味を持って大いに楽しみにしているけれども、元気で生きていてくれたら満足以上だ。親孝行は、18歳の時点でもう十分に済んでいる。

 日本では、法的には18歳で大人だそうだが、大半の18歳が話にならないくらい未熟な子供であることを、貴君もご存知だろう。だが、貴君には早く大人になって欲しい。

 まだ慣れないけれども、私としても、息子を一人の大人として尊重したいと思う。この手紙の宛名に「様」がついていることや、「貴君」という耳慣れない呼びかけは、それを表しているつもりだ。

 幸い、息子は順調に育った。背は父よりも高いし、父がかつて入りたかった東大の理類に入った。将棋もまあまあ強い。性格は父よりも遥かにいい。こうした、自分の言わば「上位互換」の子孫がいることで、不思議な「生物学的安心感」とでも言うべき感情が生じている。今回、私は癌に罹って、なかなか厳しい状況に立っているのだけれども、気分が暗くならないのはそのおかげだと思う。

 一つお勧めを記しておこう。子供はできるだけ早く持つといい。私は一巡目の結婚の際も含めてだが、少し遅かった。自由な時間を手放したくなかったから結婚が遅くなったのだが、結婚しても、子供がいても、自由にするといいのだ。

 世間で言うと叱られそうだが、特に息子はいい。自分の息子が可愛いと思う時に、かつて自分の父親は自分のことをこんなに可愛いと思っていたのかと感じ入ることがあるのだ。強くお勧めしておく。

 仕事は興味が持てて価値観に反しないものなら何でもいい。面白ければ続けるといいし、面白くなければ変えたらいい。簡単な話だ。貴君は面接に強いから転職は自在にできるはずだ。

 お金の稼ぎ方では「株式」に上手く関わることがコツになる。起業でも、ベンチャーへの参加でも、ストックオプションをくれる会社への転職でもいい。

 私の時代は、出世したり専門家になったりして「労働時間を確実に高く売る」のが無難な道だったが、時代は変わった。株式性の報酬が有利だ。

「自分を磨き、リスクを抑えて、確実に稼ぐ」ことを目指す古いパターンよりも、「自分に投資することは同じだが、失敗しても致命的でない程度のリスクを積極的に取って、リスクの対価も受け取る」のが、新しい時代の稼ぎ方のコツだ。リスクに対する働きかけ方が逆方向に変わった。

 仕事で株式性のチャンスに恵まれない場合は、インデックスファンドの長期投資が効率のいい株式リスクとの付き合い方になる。これは、凡人でもできるけれども、一見偉そうな他の投資よりも優れている。お金にも働いて貰うといい。

 以上、平凡だけれども、経済評論家としてアドバイスしておく。貴君の今後が大いに楽しみだ。

 * * *

 後編では、若者たちがこれから社会で働き、稼いでいくための具体的なサバイブ術を紹介。「転職」や「副業」に関するアドバイスは、ネクストステップを考える現役世代にも役立つ情報だろう。

後編に続く

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