“透明人間”扱いでも居心地は悪くない
引っ越し屋で長くバイトを続けているTさん(20代/男性)は、職場ではまるで“透明人間”のような扱いだが、居心地は悪くないという。
「私はすでに10年近く同じ引っ越し屋で働いていますが、名前を呼ばれたことは一度もありません。仕事中は常に『バイト』か『お前』と呼ばれ、会話といえば『そっち持て』『モタモタすんな』『さっさとやれ』ぐらい。免許がない私はドライバーと組んで仕事をしますが、どのドライバーも運転中に個人的な話はしませんし、休憩中はずっとスマホを見ているので、親しくなりようがありません。
最初は違和感がありましたが、私もおしゃべりな方ではないので、自分に向いている職場なのかなと。実際、長く続いていますし。人の入れ替わりが異常に激しいので、親しくなっても仕方ないという雰囲気でもあります」
「付き合っているのに本名を教えない」彼女の事情
適度な距離感を保てるのがメリットだという例を紹介してきたが、深い付き合いになっても、詳細を教えてもらえなかったという経験をしたのはNさん(40代/男性)。Nさんは20代から30代にかけて付き合った彼女の本名も年齢も家も、最後まで知らなかった。
「20代の頃に近所の居酒屋で飲んでいたら、隣の女性に話しかけられて意気投合。飲みに行ったり、遊びに行ったりする関係になりました。
女性は自分のことを『Aちゃん』と呼び、私も『Aちゃん』と呼んでいましたが、一緒に旅行に行った時、宿帳に記入するために本名を聞くと、教えるのを拒んだのです。結局、適当な仮名を書いておきました。
思えば、家まで送るのもNG。いろいろとおかしいなとは思いましたが、気もとても合ったので、深く考えずに付き合い続けてしまいました。そんな関係が10年近く続きましたが、ある時、突然連絡が取れなくなって、プツリと関係は切れました」