さまざまな家族のスタイルがある昨今、婚姻届を提出しない「事実婚」の夫婦も認識されるようになってきた。異性同士のカップルに対して結婚と同等の関係であると証明する「パートナーシップ制度」を導入する自治体も増え、さらには同性の事実婚もパートナーシップ制度の対象とする自治体も増えつつある。
制度的には公的に受け入れられるようになっている事実婚だが、職場や親戚などにおける人間関係の中では面倒なことも少なくないようだ。
神奈川県に住む会社員のAさん(40代男性)は、10年ほど前から同い年の女性と事実婚関係を継続している。職場でも事実婚であることを明かしているが、なかなか理解されないこともあるという。
「ほとんどの同僚は特に何も言わないのですが、あるひとりの上司がいつも『お前は入籍していないから、未婚と同じだよな』とわざわざ言ってくるんです。最初は毎回『婚姻届を出していないだけで、普通の結婚と何一つ変わらないですよ』と説明していましたが、それでも何度も言ってくるので、最近は笑ってごまかすばかりです」
共働きで収入もほぼ同じくらい、子供を作る予定もないAさん夫婦。婚姻届を提出してどちらかの名字が変わることの煩わしさを避けるという意味もあり、事実婚を選択している。また、Aさんは両親との関係があまりよくなかったため、あくまでも“個人同士のパートナーシップ”という形にしたいとの思いもある。
「その上司は、今でも『いつ入籍するんだ?』と聞いてくるんですよね。これまで何度か事実婚である理由を説明していますが、全然理解してくれません。世の中も変わってきているというのに、こういう人もまだまだいるんだな……と内心では呆れています」(Aさん)