大雪や大雨の際に活躍する「長靴」。足元がびしょびしょに濡れてしまうことを防ぐとともに、転倒防止のためにも役立つアイテムだが、東京都心ではこのところあまり履いている人を見かけない。先日の降雪時も、スニーカーやブーツなど、“通常運転”の格好の人が多かった印象だ。なぜ、東京都心では長靴を履かない人が多くなったのだろうか。都内で働く会社員たちに話を聞いた。
都内に住む会社員・Aさん(30代女性)は、長靴を持ってはいるものの、めったに履くことはないという。
「以前、冬に北陸へ旅行に行ったとき、現地で大雪が降ったんです。スニーカーを履いていたんですが、みるみるうちに積もってきて、さすがにそのまま歩いたら転びそうだったし、靴の中も濡れて感覚がなくなりそうだったので、現地で長靴を買いました。それまで、そんなにすごい大雪に遭ったことがなかったので、長靴のありがたさを初めて知りました。
それから、東京に戻ってきて大雪が降った際、『これは長靴の出番だ』と思い、それを履いて会社に行ったんです。でも、正直失敗しました……」
Aさんは、自宅から最寄りの駅まで約5分ほど歩き、そこから電車を乗り継いで会社に通っている。長靴で出社したはいいが、会社での過ごし方に困ったという。
「私の会社は、最寄りの地下鉄の駅の出口から30秒ほどの場所。つまり、雪が積もっているなかで歩くのは家から駅くらいで、あとは基本的に屋内の移動なんです。社内で履くための替えの靴を持っていく発想がなかったので、1日中ずっと長靴を履く羽目になってしまいました。社内に長靴でいると目立つし、重くて歩きづらし、蒸れる。とにかく早く帰りたい1日を過ごしました。
買い物をするにしても、新宿や渋谷などのターミナル駅では構内から濡れずに駅ビルなどに入っているお店に行けるし、外を歩いている時間は案外少ない。東京にいると、結局長靴が役目を果たす機会が少ないんです」(Aさん)
その後、Aさんの長靴は自宅の靴箱にしまわれたままだ。
「よっぽど大雪が降れば今後も履く可能性はありますが、都心で降る程度の雪であれば、長靴を引っ張り出すこともないと思います」(Aさん)