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バブルの寵児・折口雅博氏が語る「令和バブル」への違和感 「経営者の姿勢が当時と今では全く違う」

バブル時代を象徴するディスコ・ジュリアナ東京。羽扇子をもって踊る人たちも

バブル時代を象徴するディスコ・ジュリアナ東京。羽扇子をもって踊る人たちも

GAFAを生んだアメリカと日本はどこが違うのか

 グッドウィルグループ会長を退任後、私はアメリカで家族と暮らしながら新規にレストラン事業の国際展開などを手掛けてきましたが、アメリカの大企業ではプロ経営者がCEOに就くのが当たり前です。彼らは前例に囚われませんから、トンガッたことを恐れない。そして何より、ピンチに対して精神的に強い。

 アメリカも2000年代初頭のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックなど経済が大失速する事態に直面してきました。しかし、危機を前にした思想が違う。彼らはリーマンショックで大いに懲りたのですが、あくまで「リーマンショックを引き起こした異常な金融システム」に懲りたのであって、極めて現実的に改善点を探すんですね。これにより社会全体が意気消沈しなかった。そしてアメリカの株式市場はわずか2年後には元の水準に戻り、V字回復した。ここが日本とまったく違う反応でした。

 日本はバブル崩壊で社会全体に「バブル時代のようなイケイケは良くない」という空気がまん延し、消沈状態の諦めムードが色濃く漂いました。株価や不動産価格の暴落の具体的要因を探すより、バブル時代をまるごと一緒くたに全否定してしまったのです。これこそが、「失われた30年」の原因ではないかと私は思います。

 バブル崩壊後の経営者たちは、従来の人事制度のなかで実に小さくまとまってしまった。僕はいま百数十社の起業家の育成事業をやっていて、売り上げ規模では大きいところでは年商1000億円以上の上場企業経営者もいますし、まだ年商数千万円のスタートアップ企業も見ています。業種もITから人材派遣、医療、不動産などありとあらゆる業種の起業家がいます。

 彼らはみな熱意があり優秀ですが、あえて指摘させてもらうと、やはりおとなしい。どこか優等生なのです。日本からGAFAのような企業やイーロン・マスクを生みだすためには、社会全体で「もっと大胆に行こうぜ」という雰囲気を作っていくことが何よりも重要です。そのためにも、バブル否定論からの脱却は必要だと思います。

【プロフィール】
折口雅博(おりぐち・まさひろ)1961年、東京生まれ。日商岩井で「ジュリアナ東京」を企画・プロデュース。1995年にグッドウィル設立。続いてコムスンの事業を展開。2008年にグッドウィルグループの会長を辞任して渡米。現在はニューヨークと東京に拠点を持つブロードキャピタル・パートナーズのCEO。著書に『アイアンハート』(昭文社)がある。

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