2人に1人がかかる時代、「がん」は“身近な病気”になった。検査や手術、薬や予後についても状況は刻一刻と変化、進化している。知らないままでは誤った治療を受けてしまうばかりか最悪の場合、命にかかわる事態になる。診断されたその日のために、情報をアップデートしておこう。最近では体に負担がかからない「低侵襲手術」が積極的に取り入れられるようになり、高齢者でも手術をするケースが増えている。一方で、「切らない治療」はどう進化しているのだろうか。【進化するがん治療・全3回の第2回。第1回から読む】
メスを最小限にする治療方法が次々に誕生
「切らない治療」も大きな発展を遂げている。東京大学医学部附属病院放射線科特任教授の中川恵一さんが解説する。
「早期の乳がんを対象に、昨年12月から『ラジオ波焼灼療法(RFA)』が保険適用されました。細い針状の電極をがんに差し込んで電流を流し、発生する熱で焼灼する治療法です。腫瘍の大きさが1.5cm以下、転移がないなどの条件がありますが、メスを使わない画期的な治療として大きな期待が寄せられています」
胃や大腸がんにおいても、メスを最小限にする治療方法が次々に誕生している。
「早期の胃がんや大腸がんなら、内視鏡からワイヤーやメスを挿入して、腫瘍を切除する内視鏡手術が一般的になっており、術後もこれまで通りの日常生活を送れます。もちろん進行していれば臓器の切除が必要ですが、必ずしも“胃がんになったら食べられなくなる”“大腸がん患者は人工肛門になる”わけではありません」(医療経済ジャーナリストの室井一辰さん)
中川さんが続ける。
「欧米では大腸がんの場合、手術前に放射線と抗がん剤でできるだけ腫瘍を小さくする方法が主流であり、その時点で3割の人は画像で見る限りがんが消えるので、手術をせずに様子を見る『ウォッチアンドウェイト療法』が広がっています」