抗がん剤の副作用を軽減する対処法
つまり、最新の抗がん剤や放射線治療は手術に拮抗する高い効果を持っているということ。ジャーナリストの村上和巳さんはとりわけ抗がん剤の開発は日進月歩だと話す。
「いわゆる『抗がん剤』と呼ばれるものは大きく分けて3つあり、1つは昔から使われている『殺細胞性抗がん剤』。分裂・増殖している全身の細胞に作用して、がん細胞が増えるのを防ぎます。
もう1つは『分子標的薬』といって、がん細胞の増殖に必要なたんぱく質の働きを抑えることで、がん細胞を増えにくくします。
最も新しいのは免疫力を強化してがん細胞を攻撃する『免疫チェックポイント阻害薬』です。この薬の驚くべきところは、転移したがんでも“消える”こと。それまでは手の施しようがないと考えられていた他臓器への転移に光明が見え始めており、残念ながら効果がない人もいますが、画期的な薬だといえます」
新薬の登場とともに、がんの性質に応じて、より個別的な対応ができるようになった。「『プレシジョンメディシン』という、遺伝子検査を組み合わせた治療(がんゲノム医療)が広がり、遺伝子の変異を調べることで、効く薬をあらかじめ知ることができるようになってきました」(室井さん)
脱毛や吐き気、倦怠感といった強烈な副作用を伴うこともある抗がん剤だが、国立がん研究センターがん対策情報センター本部副本部長の若尾文彦さんは「副作用を軽減する対処法(支持療法)が進み、つらさも以前より軽減されている」と指摘する。
「髪の毛が全部抜けたり口内の炎症で何も食べられなくなるようなケースも減っています。ただし分子標的薬は、がん細胞のみをピンポイントに攻撃するため、以前の抗がん剤のような副作用は出ないものの、いままでとは違う手足のしびれや高血圧などを起こすことがある。さらに、免疫チェックポイント阻害薬は、免疫細胞のブレーキを外し、がん細胞を攻撃するので、こちらもいままでとは異なる高熱や息切れ、下痢などを起こすことがあり、注意が必要です」(若尾さん)