「遺言書は必須」「生前贈与しないと損!」「やっぱりまずお墓を買わないと」……ひと口に相続といっても、やるべきことが多すぎて、何から手をつけていいのかわからない。本当に必要なもの、そして優先させるべきことは何なのか──。専門家たちにランキングしてもらった。【相続の準備ランキング・前後編の後編。前編から読む】
本誌・女性セブンは、相続のプロ8人に「絶対に必要な相続準備」のアンケート調査を実施した。【*】
【*8人の「相続の専門家」に、「優先的にやっておくべき相続準備」を1~10位まで挙げた上で10点満点で採点してもらい、本誌・女性セブンにて集計。 明石久美さん(相続・終活コンサルタントで行政書士)/板倉京さん(税理士)/遠藤知穂さん(ベリーベスト法律事務所の弁護士)/大田貴広さん(税理士)/木下勇人さん(税理士・公認会計士)/曽根恵子さん(相続実務士で夢相続代表)/丸山晴美さん(消費生活アドバイザー)/三原由紀さん(プレ定年専門ファイナンシャルプランナー)】
遺言書を作るのを妨げる「心」と「手続き」2つのハードル
法定相続人の把握から不要品整理まであらゆる準備をしたうえで、それらを完成させるのが「遺言書の作成」(アンケート2位)だ。遺言書をつくったことで課題が山積みだった相続問題が一気に解決した、こんな話がある。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「父と娘、そして父の再婚相手の3人家族の例では、娘と再婚相手は養子縁組をしていなかったため、戸籍上の親子ではありませんでした。ですが母娘は仲がよく、父が先立った後、再婚相手は自分が夫から相続した財産を残すつもりでした。
しかし戸籍上は赤の他人である娘には、再婚相手が持つ財産を相続する権利はない。そのうえ再婚相手には海外に消息不明の弟がいました。相続人の中に行方不明者がいると、その時点で遺産分割協議ができなくなってしまうのです。
そこで再婚相手は“娘に相続させる”という遺言書を書き、それによって無事、娘に財産を相続させられるようになりました」
血のつながりという大きな法的効力を持っている人ほど、遺言書をつくらないケースが多い。わざわざ遺言書を書くまでもないという思いに加え、そこには「心」と「手続き」の2つのハードルがあると、ベリーベスト法律事務所の弁護士・遠藤知穂さんは言う。
「遺言書は死ぬための準備というイメージが強く、遺言書をつくることで自分の死を考えることに対する抵抗があります。もう1つは“わが家は財産が少ないから、遺言書なんておおげさなものは必要ない”という思い込みです」(遠藤さん・以下同)
だが相続争いの8割近くが財産5000万円以下の家庭で起きているという現実を見ても、金額が少ないからといって遺産分割がラクになるというわけでは決してない。「残された家族が何とかしてくれるだろう」という思い込みは捨てるべきだ。