年老いた親の世話や看取り、そして死後の手続きは、子供たち「きょうだい」で協力し、円満に進めていく──そんな家族像は、残念ながら幻想かもしれない。親の死後に起きるトラブルの大半は、身近なはずの「きょうだい」の間で生じているという現実がある。
きょうだい間の負担に差があると
親の介護や看取りについて、事前にきょうだい間で役割分担が話し合えているケースは少ない。それゆえ、いざ問題に直面した時に思わぬトラブルが生じることになる。事例と対策を見ていこう。
介護は重労働だ。きょうだいの1人に負担が偏ると、疲労と心労が積み重なり、家族関係には亀裂が走る。
3兄弟の長男・Aさん(男性・60代)は、約10年にわたって母の介護を一身に担ってきた。
Aさんは実家の近くで家を持っていたが、母が要介護となったことを機に自宅を売却し、実家に戻って介護に専念した。ところが10年の介護の末、母親が亡くなると、2人の弟から「遺産は実家しかないから売却・換金して3等分してほしい」と告げられ、Aさんの不満が爆発したという。
介護アドバイザーの横井孝治氏が言う。
「介護は心身とも負担が大きいため、きょうだいの1人が最初は『親のために』と引き受けても、その状態が長く続くと『他のきょうだいに押しつけられた』と感じ、揉めごとになりやすい」
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