今年の元日、石川県・能登半島で最大震度7を記録する地震が発生。これにより、県内の7000人以上がいまだ避難所生活を強いられている(2月中旬時点)。たとえ地震では生き残っても、ストレスなどによる災害関連死で亡くなるケースも徐々に増え、その後に長く続く避難所生活の過酷さやさまざまな問題が浮き彫りになってきている。そこで“自宅で避難”をするための基礎知識を探った。【全3回の第1回】
「避難所へ行けばなんとかなる」は甘い
「能登の避難所ではプライバシーを保つためのパーテーションや簡易ベッドが不足しています。床にシートを敷いただけの環境では、被災者の健康は守れません。こういった環境整備の問題は、30年前から改善を求められてきたにもかかわらず、まったく対処されていないことが、今回の地震で明らかになりました」
とは、1995年の「阪神・淡路大震災」で避難所生活を経験した防災士の稲垣暁さんだ。
こういった状況を踏まえ、マンション防災士の釜石徹さんは、「自宅が全壊、半壊するなど住めない状況でない限り、避難所に行くべきでない」と語る。住み慣れた自宅で家族やペットと過ごせる「在宅避難」は、災害関連死を予防するなどのメリットもあるという。
全国の指定避難所は8万2184か所(令和3年の内閣府調査)だが、これは充分な数ではなく、そもそも多くの人が避難所に入れない。避難所へ行けばなんとかなる、という考えは甘い。安全な在宅避難の方法を一緒に考えたい。