岐阜市民は「日常で贅沢」を
加工食品部門でも“意外なナンバーワン”が多数。たとえばバターの支出額トップは、2117円で京都府京都市。八ツ橋や抹茶など「和」のイメージが強いが、歴史家で国士館大学大学院客員教授の八幡和郎さんは京都人とバターの親和性は非常に高いと分析する。
「京都の人たちはやわらかくて甘いパンが好きで、ホットケーキもよく食べます。何よりいちばんの理由は和菓子など伝統的にお菓子文化が根付いていること。
嗜好品に求めるレベルが高いので、洋菓子においてもおのずと味の決め手となるバターをよく消費するのでしょう」
同じく嗜好品であるコーヒーを提供する「喫茶代」でも意外な結果が出た。『コメダ珈琲店』をはじめとする「名古屋のモーニング」が全国的に有名だが、家計調査のトップは1万5099円で岐阜県岐阜市。しかも4年連続だ。
「実は喫茶文化が盛んになったのは名古屋ではなく、愛知県でも岐阜県寄りの一宮市一帯です。その一宮市から岐阜県の羽島市にかけての一帯は明治時代から毛織物の産地で、裕福な家が多かった。そのためかつては贅沢だった喫茶店が、そのあたりのお金持ちを中心に大正時代頃から流行りだしたんです。
その後、繊維問屋などアパレル関係の人たちだけでなく、農家の人たちも作業の合間に喫茶店で時間を過ごすようになり、コスパを重視したモーニングサービスが始まった。岐阜の人たちには、日常の中のどこかにほっと息をつける贅沢な時間を作ろうという気質があるのだと思う。そのことも今回の結果につながったのでしょう」(八幡さん)
意外に思える結果も、知れば納得。家計調査は「おらが町のふるさと自慢」の宝庫だった。
(了。第1回から読む)
※女性セブン2024年3月28日号