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中学受験の最難関「筑駒」で辞退者増加の異変 通学区域拡大で“記念受験”して合格した層が選んだのはどの学校か

開成を辞退して他の私立に行く生徒がいる理由

 1月末に私が取材した塾関係者はこう話していた。

「開成の辞退者のほとんどは筑駒に合格した層ですが、開成以外の私立に進学することもしばしばあります。理由は自宅からの通学時間です。たとえば、開成を辞退して、横浜の聖光学院や栄光学園に進学する生徒は毎年存在します。(神奈川の)菊名に住んでいる生徒が開成に通うと1時間以上かかりますが、横浜にある聖光なら30分ちょっとで行けます。その生徒にとって、開成は通学時間が倍かかるわけです。開成も聖光も素晴らしい学校ですが、どちらも合格した時に、近い方を選ぶ生徒も出てきます。それと同じような構図で、筑駒に受かっても近場の学校を選ぶ受験生が出てくると思うんですよ」

 そして、こうも話す。

「筑駒の受験日は2月3日です。国立や公立一貫校の受験が集中する日です。一方その日は、難関私立中学の入試は少ない。そのため、私立志望者は3日にスケジュールが空くこともあります。そうすると、塾に薦められて、力試しで筑駒を受験するケースが出てきます。記念受験ってやつですね。学区が広がって、埼玉や千葉などの幅広い地域の受験生が記念受験をするようになると、“受かったものの、やっぱり遠いから通うのは無理”と考えて、別の学校に進学する生徒も出てくるんじゃないですか」

 今回、新たに通学区域に加わった千葉の松戸市や船橋市、埼玉のさいたま市・浦和区や大宮区は、中学受験に熱心な家庭が多い地域でもある。住宅費を抑えるために都内に住むのを避けて、その分、教育費につぎ込もうという層も存在する。千葉の松戸や船橋も渋谷幕張や東邦大東邦などの進学校へのアクセスがよく、また、東京にも出やすいから、受験に積極的な家庭が多く、学力が高い生徒も目立つ。

 とはいえ、浦和や大宮、松戸などに住んでいる場合、開成がある荒川区・西日暮里には30分ほどで通えるが、筑駒がある世田谷区・池尻には1時間以上かかる。開成は西日暮里駅から徒歩で3分ほどのところにあって、通いやすい。

 そうなると、筑駒に合格しても「開成の方が近いから通いやすい」と判断する保護者や生徒も出てくるだろう。実際、SAPIXの入試分析会でも筑駒の繰り上げ合格者が多かったことに触れ、通学の利便性などから開成を選択した受験生がいたと述べた。また、別の分析会で早稲田アカデミーの竹中孝二教務本部長は「神奈川方面の生徒が通学の都合で聖光を選んだケースもあったのではないか」と触れた。

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