不動産価格が上昇を続けている。不動産経済研究所によると、2023年に東京23区で発売された物件の平均価格は1億1483万円と1億円を超えた。物件価格が高騰する中、中古物件という選択肢をどう考えるべきなのか。『なぜマンションは高騰しているのか』が話題の不動産事業プロデューサー・牧野知弘氏が中古マンションを選ぶうえでの重要ポイントを解説する。
* * *
「新築マンションが高騰していて、とても手が出ません。どうしたらよいでしょうか」。最近よく受ける相談です。
日本人は新築マンション信仰が強いと言われています。確かに、新築マンションの清潔さ、新鮮さは心地よいものがあります。購入したばかりの新車の、独特の匂いに高揚感を覚えるのと同じです(もちろん嫌いな人もいますが)。
しかし「住む」ことだけを考えれば、新築でなければならない理由はありません。前の住民が過ごしたことで付いた多少の汚れは、クリーニングやリニューアルを行なうことで、築年数がそれほど経っていなければ、ほぼ新築同様の佇まいにすることが可能です。新築のお仕着せのデザインから、自分好みの仕様に設え直すことだって容易いはずです。
新築マンションは高すぎて買えないから中古マンションで我慢する──。まずは、この発想を捨てましょう。実は、マンションは中古こそ「買い」なのです。ご説明しましょう。
新築マンションでは時折、建物の不具合が発覚します。建物の構造計算書を偽装して世を震撼させた姉歯事件、建物の杭が地盤に到達していなかった横浜のマンション傾き事件などは記憶に残っていることと思います。
アメリカでは、新築の住宅は戸建てもマンションもあまり人気がありません。以前、テレビ番組でご一緒したテレビ・プロデューサーのデーブ・スペクターさんから、「どうして日本人はみんな、新築住宅を買うの?」と聞かれたことがあります。
彼に、なぜ中古が良いのかと問い返すと、「新築の建物だと、どこに問題があるかわからないでしょう。でも、中古ならだいたい新築時の不具合が出尽くしているから安心です。アメリカで中古住宅が好まれるのは、それが理由です」と言われました。
もっともな理由だと思います。私もマンションを買いたい人には、「築7~8年程度のマンションを選びましょう」とアドバイスしています。建物竣工後一定期間が経過すると建物の不具合はおおむね出尽くし、必要な修繕が施される、あるいは特定されるからです。