田代尚機のチャイナ・リサーチ

【銅先物価格】中国の需要拡大、供給制約が上昇を後押し 一方で回復の遅れる中国不動産市場が下落リスクに

銅の用途は電線、家電、自動車など幅広い(Getty Images)

銅の用途は電線、家電、自動車など幅広い(Getty Images)

 銅価格が上昇し始めた。銅先物(当限つなぎ足、COMEX)の値動きをみると、3月18日の終値は4.131ドル/ボンドで昨年4月17日以来の高値(場中)を記録している。直近では2月9日に年初来安値を更新したところで底を打ち、2月下旬の浅い押し目を経て急騰している。

 銅の用途は電線、家電、自動車など幅広く、多様な製品に使われることから、その価格は景気の先行指数として多くの投資家から注目されている。また、ICSGによれば2023年における中国の銅消費量は世界全体の60%を占めており、中国景気は世界の銅価格に対して大きな影響を与えることが知られている。中国本土の銅需給が気になるところだ。

 まず、本土市場の銅関連銘柄、山西省で銅の採掘から選鉱、精錬まで一貫して行っている北方銅業の株価の動きをみると、2月6日の場中で年初来安値となる3.98元を付けた後急騰しており、直近では14日、15日と2日続けてストップ高、18日も4.55%上昇しており、この日の終値は7.12元で引けている。この約1か月半の間に株価は8割近くも上昇しているが、同業他社の株価も同じような値動きをしている。

 本土の市場関係者たちが上昇の要因として挙げているのは、需要が今後“強含む”との見通しだ。構造要因としては、銅を大量に使用する電気自動車への移行がさらに加速すること、サイクリカルな要因としては電気設備の更新が盛んな時期に入ること、さらに、今年の経済政策として消費を活性化させるために“古い設備を新しくする(以旧換新)”政策が打ち出されたことなどだ。

国家が市場に強く関与する形での支援策

 中国国務院は3月7日、「設備更新と消費品における古い製品の新しい製品への買い替え行動を大規模に押し上げるための方案」を発表した。市場の需要に従う形で、財政支出、減税や、金融、投資などによる支援を組み合わせて政策を実施するとしている。

 具体的な目標として、2027年時点で、工業、農業、建設、交通、教育、文化旅行、医療などの領域における投資規模を2023年比で25%以上拡大させること、重点産業における主要設備のエネルギー利用効率を基本的に省エネレベルに引き上げること、A級レベルの環境性能を持つ生産設備の割合を大幅に引き上げること、一定規模以上の工業企業におけるデジタル化の研究開発、設備設計ツールの普及率、カギとなる重要なプロセスに関するデジタル制御率について、順に90%以上、75%以上に高めること、廃車のリサイクルの量を2023年比で倍増以上とすること、中古車の取引量を2023年比で45%増とすること、廃棄家電のリサイクルの量を2023年比で30%増とすること、資源供給におけるリサイクル材料の比率をさらに一歩進めて高めること、などが示されている。

 社会主義国家ならではの“国家が市場に強く関与する形での支援策”が打ち出されている。

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