しかし、生活費折半が2人の合意である場合は、婚姻費用の分担割合を定める契約として有効ですから、彼が半年分の生活費中の娘さんの負担分の返還を求めるのは不当ではありません。
なお、民法では「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」とされ(754条)、夫婦関係が破綻する前なら契約を取り消せます。この規定が内縁関係に適用されれば、彼が好意で生活費を出した時点で生活費折半の契約が取り消されたと解することもできますが、事案は異なるものの、内縁関係への適用を否定した裁判例もあり、確実ではありません。
そこで、折半合意がある場合、「好意で出したのは彼の贈与であり、実行済みの贈与の返金を求めることはできない」との立場で拒否することもひとつの方法ですが、万全ではありません。紛争回避のため、無理のない範囲で妥協を図ることをおすすめします。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2024年4月4日号