妻もパートを辞める羽目に
A氏の出費は治療費だけではなかった。
「自宅から病院まで車で1時間以上。通院のたびにかかる高速代やガソリン代もばかにならなかった。抗がん剤投与後はぐったりしている私に代わり、妻に運転してもらいました。妻は私の治療サポートに専念するためパートを辞めざるを得ず、家計は途端に苦しくなりました」(同)
その間、仕事はどうしていたのか。
「休むほかありませんでした。38日間の入院中はもちろん、退院後も通院治療があり、仕事との両立はできなかった。その間は年次有給休暇(有休)を活用してなるべく収入が減らないよう工夫しました。抗がん剤治療を受けた後は3~4日、発熱やひどい倦怠感が続くので、スケジュールを調整して有休を取り、数日後に職場に戻ることを繰り返しました」(同)
会社員などが病気などで就労できない状態の場合、加入する健保組合などから「傷病手当金」(通算で最長1年6か月間)が日割で支給されるが、金額は月収の3分の2程度。男性は傷病手当金ではなく有休を利用することで、収入減を最小限に抑えたという。
「朝出勤できても午後に体調が崩れることがありましたが、そんな時は『すぐ帰れ』と言ってくれる理解ある職場でした。同僚らには迷惑や負担をかけましたが、おかげで仕事を続けることができました」(同)
次のページ:がんのステージが上がると休職期間が長期化する