今の大学は教習所に近づいている
1970年に来日したOECD(経済協力開発機構)の日本教育調査団による報告書で「レジャーランド」と揶揄された日本の大学。その頃だって学費と学歴のトレードが行われていました。
しかし、レジャーランドというからには、その交換作業の周辺に楽しみが詰まっていたわけでしょう。出席しなくても単位は楽勝で取れてのんびりできる。サークルにバイトに麻雀に。善悪や良否はさておき、学生たちはエンジョイしていた。リラックスしていた。青春を謳歌していた。つまり、学費と学歴の交換という骨格のまわりに、無駄や贅肉が付いていた。
今の大学は違います。出席しなくても単位が取れる授業もまだありますが、ここ10年で、多くの授業が出席マストに移行しつつあります。
大学生はのんびりレジャー気分を味わっていられません。リラックスムードはない。入学直後から就職活動モード。インターンシップも1年生から参加する。うかうかしておれず、息つく暇もないほど息苦しいのが実態です。
だから、キャンパスでも、まるで用があって仕方なく市役所に行くときのような顔つきとテンションの学生が増えつつあります。
大学は、教育場ではなく教習所に近づいているのです。授業に楽しさなど求めておらず、思い出づくりも別に期待していない。お目当ては運転免許(学歴)。教官に運転技術は習っても、人生を習おうなどとは思わない。顔と名前すら覚えていない。いかに効率的に資格を取得できるかが主眼。そこでは、レジャーランドのような嬉々とした声は聞こえてきません。必要なことを必要なだけやる。運転免許さえ手に入ればあとは用無しなのです。
レジャーランドやテーマパークならば、開店前からウキウキした人々が並び殺到するかもしれませんが、今の大学に人々が群がる理由はウキウキでもワクワクでもありません。目当ては大卒資格。取り急ぎ勝ち馬に乗っておき、ソレナリの満足とマズマズの安心を得るためです。