もちろん、制度設計の問題もあるでしょう。「大学くらい出ておかねば」と考え大学に進学する人が増えたわけですが、その結果、大学生の2人に1人は奨学金を利用しています。「奨学金」といえば聞こえはいいですが、実際には借金。なかでも多くの学生が利用する日本学生支援機構からお金を借りた場合、奨学金の返還は貸与終了の翌月から数えて7カ月目に開始。つまり、卒業して約半年後には借金返済が始まるわけです。
こうなると、一心不乱に就職活動に励みますし、少しでもイイところに就職することが目的になっても不思議ではありません。考えさせない仕組みがあるのですから。
ファスト・サービスは、割安感と満足感がカギ。目的に対して整合的か否かで良し悪しが決まります。今や大学の目的は効率的な学費獲得であり、学生の目的は効率的な学歴獲得です。学生と教員の間でファスト・サービスへの合意が取れているわけです。
「吹きこぼれ」こそ厄介な問題
教育業界ではよく、「落ちこぼれ」が問題視されます。周りのみんながスラスラできることができずに躓いてしまい、落第者の烙印を押されてしまうのです。
では、落ちこぼれなかったら、その後、なんの問題もなく順風満帆に社会という大海原で航海できているのでしょうか。
実は、全くそんなことはありません。2つ、問題が生じています。ひとつは、社会がその人の才能を見逃してきた場合に発生します。既存の社会の枠組みではすくいきれず浮いた存在となり、社会からこぼれ落ちていってしまう。せっかく才能があるのに、周囲に目利きがいないため、宝の持ち腐れです。こうした人や状況を、教育業界では「落ちこぼれ」に対して「浮きこぼれ」といいます。
そしてもうひとつ、「吹きこぼれ」の問題も看過できません。これは、それまでの課題は難なくクリアしてきたものの、大学を卒業する際の進路決定や、卒業後の仕事で躓くケースです。