追い詰められるほど、ギャンブルが楽しくなる心理
水原氏は2021年に違法賭博の元締めと出会い、野球以外のスポーツ賭博に関わるようになったと報じられている。2022年の年末までに100万ドル(約1億5000万円)の負債を抱え、当時は家族や友人に借りていたというが、2023年の初めに400万ドル以上の借金を抱えるようになった。
一気に借金が膨れ上がった水原氏について「なんとなくわかる」と話すのは、自営業・Bさん(40代)だ。Bさんは、競馬、ボートレース、競輪、オートレースという公営競技、さらにはパチンコ、パチスロと、日本国内で合法となっているギャンブルをすべて楽しんでいるという。
「負けが込むと、それを取り返すためにさらに賭けて負けてしまう……というパターンが多いという話はよく聞きますが、個人的にはちょっと違う。負けが込んで追い詰められるほど、ギャンブルが楽しくなっている自分を感じることがあるというのが本音です。むしろ自分を追い詰めたいから、“当たりそうにないところに多く賭ける”ということすらある。そういう変なテンションを含めて、ギャンブル依存症ということなのかもしれないです」(Bさん)
5万円負けから4万円取り戻したら、それはもう勝ち
パチンコ業界に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏は「パチンコやパチスロの場合、出玉の波が荒い機種ほど人気になりやすい傾向がある」と話す。
「出玉の波が荒いというのは、“大きく負ける可能性も高いけど、大きく勝つこともある”ということです。つまり、ハイリスクハイリターンです。リスクが高い機種が人気になりやすいというのは、“負けが込んで追い詰められるほど、ギャンブルが楽しくなる”という部分につながっているのかもしれません。
あと、パチンコファンがよく言う話として、“5万円負けから4万円取り戻したら、それはもう勝ち”といったものがあります。負けて自分を追い込む楽しさと、大当たりを引いて出玉を獲得する楽しさの両方を体験できれば、トータルで負けていても満足できてしまう、ということです。こういった思考回路になっていくと、当然ながら負けることに慣れていきますし、金銭感覚もおかしくなっていく。このような感情が芽生えてきたら、危険信号だと思ったほうがいいでしょう」(藤井氏)
水原氏のように大きな額を動かすギャンブルでなくても、依存症の萌芽は身近なところにもあるのかもしれない。ギャンブルを楽しむ際には、そういった危険と背中合わせであることをしっかりと理解しておく必要があるだろう。(了)