貯蓄から投資へ──国を挙げた資産所得倍増計画のもと、1月からスタートした新NISA(少額投資非課税制度)。いまや成人の5人に1人が利用しており、その追い風となるかのように、日経平均株価は「バブル超え」を記録、市場は大いに沸いている。その一方で長く市場を見つめてきた投資のプロの中には、大きな危惧を感じている人もいる。
1999年、日本初の独立系投資信託会社として誕生した「さわかみ投信」。創業者の澤上篤人さん(77才)は「さわかみファンド」1本だけを運用して純資産4400億円を築き、12万人以上の顧客を抱えている。
そんな市場を読む卓越した力を持つ澤上さんは「いまは新NISAを始めるタイミングとして最悪」と、過熱する“新NISAブーム”警鐘を鳴らす。
「制度自体は素晴らしいものですが、すでに株価が上がっているいまから始めたところで、その後値下がりしたら損になります。つまり、いま始めるのは“高値掴み”にほかならない。いずれ訪れる株価暴落で大損する可能性すらあります。
長期投資家として長年市場を見てきて思うのは、日本の株価は34年間かけてようやく過去最高の株価を抜いたというだけで、順調に上昇してきたわけではないということです。
いまの株価は実体経済よりはるかに高く、いわば砂上の楼閣。近い将来、大暴落は免れません。
その背景には、1980年代から年金マネーが急激に膨れ上がり、それが市場に流れ込んでいることなどがある。低金利でお金をバラまく金融政策も原因の1つでしょう。その結果、いまのインフレが起きている。どこかで必ずガタが来ることは明白です。
いざ暴落が起これば、“下がるわけがない”と思い込んでいた人たちが持っていた株を慌てて売り始め、さらに株価は下がることになる」(澤上さん・以下同)