また、果樹も温暖化の影響で、「なしやももの花の咲く時期が30年前より約2週間早まった」と話すのが、農研機構の果樹茶業研究部門・研究推進室の今井剛さんだ。
「りんごは高温による日焼け被害が広く見られる一方、開花後の霜で実が枯れて生産量が減少しました」(今井さん)
一方、亜熱帯果樹栽培に各地が取り組んでいる点も注目だ。
「三重県が力を入れるアテモヤのほか、アボカド、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツの国内生産も始まっています」(西森さん)
【牛乳・牛肉】猛暑に弱い家畜の世話は暑さ対策に加えゲップ対策も重要
牛乳や肉を生産する酪農・畜産の現場では、温暖化による二季化はどのように影響しているのか?
「実は夏の暑さは家畜・家禽の生産性を低下させます。なぜなら、人間が栄養として利用できない牧草を乳や肉などの良質なたんぱく質へと変換する過程でたくさんの熱が出るためです。夏はその熱を体外に逃すのが難しく、体温が上昇して飼料を食べられず、肉も乳も生産量が落ちるのです」
と話すのは農研機構畜産研究部門乳牛精密栄養管理グループ長の野中最子さん。
「国内の農林水産業からの温室効果ガス排出量は総排出量の約4%ですが、そのうち家畜の消化管内発酵由来メタンが15%を占めます。実際、牛のゲップには温室効果ガスのメタンガスが含まれ、牛1頭が1日に出すメタンの量は大人の泌乳牛で500L、大人の和牛で250L。メタンを減らす飼料を工夫したり、メタンの少ない牛を選び増やすなどの積み重ねが、牛のゲップ問題軽減につながるのです」(野中さん)