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「家督相続」の慣習だけで家業を継いでいたイチゴ農家男性 相続登記の手続きがされていない不動産の分割協議で30人以上の権利者が発覚、大変なことに

実家の土地や畑が祖父名義のままだったという(イメージ)

実家の土地や畑が祖父名義のままだったという(イメージ)

 この4月、「家の相続」のルールが大きく変わった。亡くなった親の不動産を受け継ぐ際の「相続登記」が義務化されたのだ。現実問題として、義務化以前でも「相続登記されていない不動産」は大変な面倒につながった。そのリアルケースを紹介するとともに、どうすればよかったのか専門家にアドバイスをもらった。

 栃木県のイチゴ農家だった父親を亡くした男性・Aさん。広大な畑など複数の不動産を所有していたはずだが、父親名義の不動産は実家の建物しか出てこない。おかしいと思って祖父の名前で調べると、実家の土地や畑が、祖父名義になっていた──。

 1947年までの旧民法は長男が一家の財産を継ぐ「家督相続」だったが、廃止された現在も、地方では慣習として残るケースが少なくない。Aさんの父親は長男で、相続登記の手続きをせずに家督相続の慣習だけで家業を継いでいたのだ。

 Aさんから相談を受けた吉澤相続事務所代表・吉澤諭氏が言う。

「このケースでは、Aさんの祖父の遺産分割協議を改めて行ない、実家の土地や畑をAさんの父親が相続したと確定させない限り、Aさんの相続手続きに進めません。ところが、Aさんの祖父の相続人である叔父や叔母(父の弟、妹)には亡くなっている人もいた。亡くなっていればその相続人である配偶者や子供(Aさんのいとこ)が権利を受け継ぐ。昔はきょうだいが多かったので権利を継いだ人は30人以上にのぼり、しかも全国バラバラに暮らしていたため、大変な手間になった」

 30人以上に遺産分割協議への協力を求めるが、なかには捺印を渋る人も出てくる。遺産分割調停・審判になると、時間も費用もかかる。

「父親が元気なうちに祖父からの相続手続きを進めるべきでした。父親が直接兄弟姉妹に頭を下げてまわればスムーズに名義変更が進んだかもしれません」(吉澤氏)

※週刊ポスト2024年4月12・19日号

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