慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター共同研究員特別招聘教授の廣瀬信義さんが語る。
「寿命は環境要因が大きく関係しますが、遺伝の影響も見られます。有名な双子調査の結果からは、寿命は2~3割ほどが遺伝が関係し、残り7~8割が環境要因でした。実際に遺伝子解析(全ゲノム相関解析)をしても同じ結果でした。
また琉球大学の鈴木信教授の研究では、先祖や親族に100才まで生きた人が存在した家系は平均寿命に到達する確率が65%でしたが、そうでない家系は同じ確率が40%ほど。やはり、長寿家系は存在すると考えられます」
幸男さんは過去に大きな病気を経験したことはなく、これも母のきんさんと同じ。
「健康の秘訣は歩くこと。毎日朝夕に30分散歩して、食事は食べたいものを好きなだけ食べて、おしゃれして出かけることも大好きです。40代で糖尿病になったけど重症ではなく、いまも病気とつきあっています。医者から“血管がやわらかい”と褒められたことがあり、その体質は母親譲りかとも思います。
母も年を取ってから病気知らずで100才を超えてもよく歩いていましたが、ぼくが病気にならないことも遺伝かもしれないね」(幸男さん)
病気にも遺伝の影響はあるのか。『「頭のよさ」は遺伝子で決まる!?』の著者で、東京大学名誉教授の石浦章一さんが語る。
「特定の病気には遺伝の影響が明確に表れます。たとえば、若年性アルツハイマーや家族性高コレステロール血症は遺伝します」
反対に、“病気にならない”遺伝子も存在すると廣瀬さんは続ける。
「とりわけ長生きする人に顕著であり、100才の人の遺伝子を調べた研究では糖尿病やアルツハイマー、心臓病になりづらい遺伝子を持っている人が多かった。たとえば『APOE2』という遺伝子を持っている人は動脈硬化やアルツハイマーになりにくく、『APOE4』を持っていると逆に動脈硬化性疾患やアルツハイマーになりやすいといわれます」