誰もがビリギャルのような一発逆転ができるわけでない?
人生を大きく左右する「才能」も遺伝の影響から逃れられない。勉強にかかわる「知能」もそのひとつ。安藤さんが言う。
「知能における遺伝率は、子供のときは20~40%で、青年期になった頃にだいたいピークを迎え、50~60%ほど。その後はほぼ変わりません。そのため、“親の受験”ともいわれる『中学受験』くらいまでは親のがんばりによって子供の成績が左右されますが、それ以降、子は成長するにつれて徐々に遺伝的素質が出て自分の好きな環境を選択するようになる。つまり、成長するほどに遺伝の影響が顕在化するのです」
学年ビリのギャルが一念発起し、1年で偏差値を40上げて慶應義塾大学に現役合格した「ビリギャル」。多くの人に勇気を与えたサクセスストーリーだが、橘さんは懐疑的だ。
「彼女はそもそも偏差値の高い学校にいました。生得的に知能の高い女の子がたまたまギャルをやっていただけで、誰もがビリギャルのような一発逆転ができるわけではないでしょう。
ちなみにアメリカには、教育格差をなくすため教育に予算を投入したら、逆に教育格差が開いたという研究があります。予算を増やして新しい教育教材などを提供しても、それを有効に活用して学力を上げたのはもともと優秀な子で、平均より下にいる子は与えられた機会をうまく使えなかった。
さらにいえば、ビリギャルのように『努力』できるかどうかもパーソナリティーがかかわっていて、遺伝の影響を免れません。がんばろうと思っても生得的にがんばることが苦手な子供が一定数いるという“不都合な真実”から、誰もが目を背けています」