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【遺伝の研究】「誰もがビリギャルにはなれない」「天才は奇跡的に生まれる」 収入・犯罪・離婚・才能…人生に大きな影響を与える遺伝にどう向き合うか

その人の人生がかなりの精度で予測可能に

 この先、遺伝研究はどこまで進むのか。

「DNAのすべての情報を調べる『ゲノムワイド関連解析(GWAS)』と遺伝のビッグデータを組み合わせることで、極端に言えば、受精卵の段階で子供の身長や体重だけでなく、大学に進学するかや、刑務所に入る可能性があるかまで、かなりの精度で予測できる世界が到来しようとしています。遺伝子編集によって優れた受精卵を作る『優生学2.0』もいずれ実現するでしょう」(橘さん)

『「頭のよさ」は遺伝子で決まる!?』の著者で、東京大学名誉教授の石浦章一さんは、医療への応用を期待する。

「いまは個人の遺伝子を調べてオーダーメードで病気を治療する『ゲノム医療』が発展しています。特にがんや、これまで治療不可能とされたALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病でもゲノム治療が可能になってきています。将来的には、高血圧や肥満などの生活習慣病にもゲノム医療が適用されるはずです」(石浦さん)

 心身も行動も、生きている限り遺伝の影から逃れることができないという「不都合な真実」の中、私たちはどう生きるべきか。

 橘さんは「遺伝的な傾向に合わせた人生設計をすべき」と語る。

「遺伝的に打たれ弱い性格なら“嫌われる勇気”を持とうと努力するのではなく、ストレスを避けて生きられる環境を作った方がいい。誰でも好きなことや得意なことはがんばれるので、遺伝的なアドバンテージを見つけて、そこで花を咲かせることを考える。さまざまな遺伝的傾向を持った人たちが自分らしく生きていける、多様性のある社会の構築が求められています」

 安藤さんは「遺伝を強調しすぎるのは危険」と語る。

「確かに親と似た子が生まれる確率は高いですが、遺伝はランダムゆえにその子独自の出発点もまたランダムに作り出されていることを忘れてはいけません。人生は遺伝だけで決まるのではなく、自分の意思でコントロールできる部分があることをしっかりと伝えていく必要があります」

 遺伝の影響は少なくないが、すべてを決定するわけではない。あなたの人生を決めるのは遺伝でも環境でもなく、あなた自身であるのだ。

(了。第1回から読む

※女性セブン2024年4月18日号

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