一方でナビゲーションやインフォテインメントシステム、デジタルディスプレイの充実ぶりと操作性は高評価です。また2700mmという、クラスとしては長めのホイールベースやフラットなフロアによって可能となった居住性も高いのです。広々とした室内空間はリアの乗員が窮屈な思いをせずに足を組めるほどの快適さを実現しています。
居住性の次に気になるのが荷室や積載性。その容量は5人乗車時で345L、リアシートをすべて倒すと1310L。これは荷室の床面を低くして実現できた容量です。サイズを見ると5人乗車の奥行き(床面)は59cm、リアシートを倒したときには荷室の床は完全にはフラットになりませんが、奥行きが130cm確保されています。タイヤハウスの間隔は100cmありますから、リアシートを倒せば1泊での家族旅行などにもゆとりを持って対応できます。
BEVにコスパを求めるなら
走りのパフォーマンスですが、モーターによるスムーズさと低速からの力強さはBEVのアベレージをしっかりと維持していて、質感は悪くありません。とくに静粛性は想像以上に高く、快適。走りは全体的な印象は、特別にスポーティというわけではありませんが、一方でBEVとして十分な加速感があります。ワンペダルドライビングモードによるクイックな走りやコンパクトなボディが相まって、市街地でもかなり扱いやすい運転感覚によってストレスがかなり軽減されます。
このクイックな走りを安全にこなすためACC(オートクルーズコントロール)をはじめ、衝突回避支援システムや車線逸脱警報など運転支援システムも万全。高強度ボディ構造が実現した静かで安全なドライブを可能にしてくれます。
さらに安全にまつわる装備として画期的なのが、車内への幼児やペットの置き去りを検知するシステム「CPD(Child Presence Detection)が標準装備されている点です。子供や愛犬などを車内に残したままによる悲劇も防ぐことができます。ただ、この便利な装備をオンにしたまま車中で仮眠した場合、少々問題がありました。防犯のために車内からキーロックをかけるのですが、この時点で「車内に生体反応がある」と判断するらしく、何度となくアラームが鳴ってしまいました。リモコンキーで解錠すればアラームは止まるのですが、かなり慌てます。もちろんこの機能を停止できますから車中で過ごす場合などは忘れずに停止しておくことになります。
他にも災害時や、キャンプなどのアウトドアで家電品などを使用するための「V2L(Vehicle to Load)」に対応。車内にコンセントは装備されてはいませんが、AC100V・1500Wまでの電力を使用するために「BYD ACタイプV2Lアダプター」(4.4万円)が用意されています。これを充電口に差し込むだけで1500Wまでなら、電化製品に電力を供給できます。アウトドアシーンなどではコーヒーメーカーや炊飯器、ホットプレートなど消費電力の大きな電化製品も使用可能。さらにバッテリーに蓄えた電力を、家や建物に供給するV2H (Vehicle to Home)にも対応しています。災害時などにはフル充電で最大約4日分の電力を供給可能です。コンパクトなボディに屋外活動でも重宝しそうな機能をたっぷりと装備して300万円台中盤ですからコスパの良さが光ります。
ドルフィンの価格ですが航続距離400kmのスタンダードモデルが363万円、航続距離476kmのロングレンジモデルが407万円という価格設定です。輸入BEVばかりか、日産リーフ(408.1万円~)の値付けを考えると、かなりリーズナブルに感じます。昨年度のEV補助金65万円が適用されていた段階では、スタンダードモデルを298万円で購入できたのですが、4月1日からこの補助金は35万円となります。300万円切りは難しくなるわけですが、補助金の減額は他のBEVなど電動車にも適用されます。それを考えれば「コスパに優れたBEV」として魅力は変わらず、となります。昨年以上に販売台数を伸ばすことになるでしょう。