中国汽車工業協会(CAAM)によれば、中国による2023年の自動車輸出台数が日本を抜き、初の世界首位になった。その牽引役となったのが、バッテリーEV(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を中心に生産する中国の自動車メーカー・BYDだ。リチウムイオンバッテリーの製造では世界のトップメーカーという強みを活かして電気自動車の開発を進めており、その主力の1台が、低価格を武器に日本でも注目度が高いBEVの「ドルフィン」だ。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は、自動車ライターの佐藤篤司氏が、ドルフィンに乗車し、レポートする。
日本の交通モードにも合うサイズ感とデザイン
2023年より日本での販売を開始したBYD。現段階で発売されているモデルはハッチバックの「ドルフィン」と、SUVの「ATTO 3(アットスリー)」の2台(商用車を除く)です。さらに今年中頃には「SEAL(シール)」が加わることになります。2023年の新車登録台数を見ればATTO3が1198台、型式認定の取得が遅れたドルフィンが248台、合計1446台という実績を残しています。事実、今回の試乗中に4台のドルフィンと遭遇したことを考えると、ある種の勢いを感じました。
そこでドルフィンの魅力を考えてみました。外観は車名のとおり、流線型のデザインが特徴的です。当然ですが航続距離を少しでも伸ばすためのエアロダイナミクスを考慮し、なだらかなルーフラインを持つ基本フォルムには嫌みはありません。前から見れば横基調のシャープなラインを持つフロントグリルと、LEDヘッドライトやデイタイムランニングライトを装備したフロントマスクは少々大人しめですが悪くはありません。
一方で試乗中に何度かすれ違ったドルフィンの後ろ姿はかなり印象的でした。リアコンビネーションライトのデザインやボリューム感のある曲線を持つちょっぴり未来的なボディフォルムが目を引きます。このボディの大きさも都市部にある機械式駐車場に入るというサイズ感ですから実用性においても手頃感があるわけです。
次にインテリアですが、これは好き嫌いが分かれるかもしれません。色使いでもデザインでも、かなり華やかですが、よく言えばモダンで洗練されたデザイン。一方でそのデザインの味は欧州車風でも日本車風でもなく、BYD独特の味付けといった感じなのです。素材の高品質感は伝わって来ますし、手触りや体へのフィット感などストレスを感じるようなことがほとんどなく、室内での快適性と高級感を両立しています。居心地は決して悪くないのですが、色使いをはじめとした風景に慣れるまでに、少々時間が必要でした。