2024年の中学受験者数は前年よりやや減少したものの、受験率は過去最高となった。ではこのような中学受験の“熱”は今後も続いていくのだろうか。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする。【全5回の第1回】
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2024年の中学受験が終わり、新6年生たちの受験期が始まった。
今年の受験の概況の記事はたくさん出ているが、今回は「中学受験の過熱は止まらない」ということについて書いていきたい。
2023年の秋の模試の参加者の数などから、「受験者数は2023年がピークで2024年度以降は緩やかになっていく」という予想がなされていたが、2024年の首都圏における中学入試の受験者数は5万2400人で前年比200人減と、10年ぶりに減少した。一方で受験率は18.12%で過去最高を更新した(首都圏模試センター推定)。
栄光ゼミナールの入試情報センター責任者の藤田利通さんは「この受験率はあとしばらくは続く」と推測をしている。
私も一記者として、この中学受験率の「高止まり」は今後も続くと推測している。なぜそう考えるかについて言及しよう。
中学受験の「縮小フラグ」に負けない追い風
2023年、複数の模試主催会社や大手塾から「中学受験はピークアウト。これからは縮小傾向になる」と聞かされた。それが反映された記事もいくつか配信された。なぜ、彼らはそう分析をしたか。この30年間では2回、中学受験ブームがあり、過熱を極めた。まずはバブル期のもの、そして2008年前後に起きたものだ。この過去のブームを見ても、中学受験が過熱すると「中学受験は大変そうだ」という敬遠ムードが漂い始め、参戦を取りやめる家庭が増え、受験者が減少していった。
もう一つは景気と中学受験者数が連動するという傾向もある。バブル期に中学受験ブームが起きたのも保護者の収入が増え、教育に費やすお金があったからだ。バブルが崩壊すると、節約モードになって私立中学を敬遠するようになっていった。
この過去の例にならうと、2023年に過去最高の受験者数を更新するとそろそろ敬遠ムードになってもおかしくない。また、現在、株価は上がっているが、実質賃金は下がっているので子育て世帯の家計は厳しくなっている。つまり、中学受験ブームが縮小していく要素が揃っているわけで、「今後は受験者は減っていく」と分析されても当然だろう。
しかしだ。その「縮小フラグ」に負けない追い風が中学受験には吹いている。まず、東京都の高校無償化、そして私立中学に通う生徒がいる家庭への年間10万円の補助金が支払われることだ。