こうした税金を支払わないと、強制的に取り立てられます。一般の債権は、抵当権などの担保がなければ、裁判所の判決や公正証書などの強制執行できるお墨付きが必要ですが、租税債権は強制力があり、裁判手続を経なくても、滞納処分によって納税義務者の財産を差押えできます。そのため、会社の不動産や機械が公売により売却されたり、会社の債権を取り立てられ、税金に充当されます。しかも納税義務の違反で、刑事罰が科される可能性もあります。租税債権を直接侵害する犯罪を逋脱犯といい、税金を誤魔化す脱税犯がその典型で、厳しく罰せられます。
納税拒否とは、誤魔化しや不正行為をせずに税金を納めないことなので、逋脱犯の一種である無申告逋脱罪になってしまい、5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金となります。
多数の同調者を募り、納税者の反乱を計画し、それを納税拒否の形で実現しようとすると、『国税犯則取締法』が禁止する不納付等扇動犯として3年以下の懲役、又は20万円以下の罰金で処罰されます。結局、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」(憲法30条)のですから、正しく税金を納め、最終的には選挙で賢明な選択をすべきだと思います。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年4月26日号