「聴かれた回数」が指標
音楽業界は構造変化によってCDが売れなくなることで「氷河期を迎える」とされてきたが、実態は異なるようだ。
「その考えは10年以上前の認識です。2015年頃から音楽のサブスクリプション/ストリーミングサービスが普及し始め、コロナ禍以降には完全に切り替わりました。現に、YOASOBIが所属するソニーミュージックなどの大手レコード会社は、ここ数年、増収増益が続いています」(柴氏)
YOASOBIもYouTubeでの総再生数が数十億回を超えるが、CDでの発売はしていない作品もある。どのように収益を得ているのか。
「音楽産業の売り上げ指標は、『売れた枚数』から『聴かれた回数』に変わりました。サブスクサービスの利用者は約1000円の月額利用料を支払いますが、再生回数に応じてアーティストにその収益が分配されるシステムになっている」(同前)
アーティスト側に支払われる報酬は計算式がブラックボックスとなっており、明らかにされていない。通説ではYouTubeで1再生当たり0.1~0.8円と言われており、1億回を超えて再生されれば数千万円が支払われることになる。
“モノ”の発売から距離を置くソニーグループの変遷
そうしたビジネスモデルの変化は家電のような“モノ”の発売から距離を置くソニーグループの変遷ともリンクする。
2022年度連結業績(2023年3月末までの1年間)を見ると、営業利益は2年連続で1兆円の大台を突破。セグメント別では音楽で2631億円、映画で1193億円、ゲーム&ネットワークサービスで2500億円と、エンタメ3分野だけで全体の約6割を占めている。
「エレクトロニクス分野が不振になった2000年代初頭以降“終わった”とされていたソニー。そこから現在の復活に至る原動力となったのがエンタメ分野。ゲームでは実機やソフトを売るだけではなく、月額有料の会員制サービスを開始して、現在主流のサブスクを先取りしました」(大西氏)