かつてはカメラやテレビといった電化製品の販売が軸だった「総合電機メーカー」は、いかにして「エンタメのソニー」へと変貌を遂げたのか──。4月18日、ソニーグループの米映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが、米メディア大手パラマウント・グローバルの買収を検討していると報じられた。米投資会社のアポロ・グローバル・マネジメントと共同買収について協議しているという。
ソニーグループの2022年度連結業績は2年連続で営業利益1兆円の大台を突破。内訳を見ると、エンタメ3分野だけで全体の約6割を占めている。経済ジャーナリストの大西康之氏はこう語る。
「エレクトロニクス分野が不振になった2000年代初頭以降、グループを支える屋台骨を失ったソニーは“終わった”と揶揄されていました。そこから現在の復活に至る原動力となったのがエンタメ分野。『鬼滅の刃』のアニメや主題歌、世界的に注目を集めるユニット・YOASOBIなどに代表されるゲームや音楽の配信サービスを取り入れて収益の柱にしたのがソニー・ミュージック出身の平井和夫・元社長と、側近だった吉田憲一郎・会長です」
1989年の米コロンビア・ピクチャーズ買収に先立つ1968年、米CBSとソニーが50%ずつ出資し合い、合併会社CBS・ソニーレコードを設立し、音楽業界に参入する。
「盛田昭夫という天才経営者は、テレビやラジオなどハードウェアの次に映画や音楽などソフトウェアの価値が高まると考えていた。ハードウェアは、コンテンツあってこそのものだと、どの会社よりも先に感じていたのでしょう。
そのため、ウォークマンやトリニトロンのテレビが爆売れしていた当時、その売上をそのままレコード事業や映画事業につぎ込みました。ちなみに1990年代以降、ソニーはゲーム産業でも成功を収めますが、この分野は音楽分野が成功した先に辿り着いたハードとソフトが融合した究極の姿だと言えるでしょう」(大西氏)