円安が止まらない。4月15日以降23日現在、ほぼ1ドル=154円台で推移しており、先行きを懸念する声もあがっている。
為替レートは市場において市場参加者たちの自由な取引の結果として決まる以上、資金力のある欧米機関投資家や、市場の安定を目指し介入する可能性もある中央銀行などの思惑、そしてそれに大きな影響を与える金利差などに左右されがちだ。しかし、長期的な観点からいえば、やはり輸出産業の収益力、競争力が大きく影響するだろう。
円安により輸出産業の国際競争力が高まることを期待したいところだが、アベノミクス効果で円安トレンドへと転換した2013年以降の11年間における貿易収支の推移をみると、黒字を記録したのは2016、2017、2020年の3年だけ(円ベース、2023年は速報値、財務省貿易統計、以下同様)。最大の貿易相手国の中国に対しては、大幅な貿易赤字を続けており、2023年には輸入は圧倒的な第1位だが、輸出では米国に抜かれ第2位となっている。そのため貿易赤字額は過去最大の6兆6528億円に達している(日本全体の貿易赤字額は9兆2914億円で前年よりは縮小している)。
中国側の統計で、1-3月の国・地域別輸入先(人民元ベース)をみると、第1位は台湾で、第2位は韓国。第3位は米国で第4位はオーストラリア、日本は第5位であった。以下、ロシア、ブラジル、マレーシア、スイス、ベトナム、ドイツと続く。
新型コロナの流行前、急激な円安が進展する前の2019年1-3月のデータでは日本は第2位。第1位は僅差で韓国、第3位は台湾、第4位は米国といった順位であった。2024年1-3月時点の日本からの輸入シェアは5.8%に過ぎず、5年前と比べ2.4ポイント低下している。
この2時点間の金額を比べてみると、全体の約4分の1を占める電機、電気、音響映像設備及び部品は6.4%減少している。そのほか、減少金額の大きな項目では、銅・製品、プラスティック・製品などが挙げられる。
米中関係の緊迫化などによる政治的な要因で同盟国である日本が対中輸出を減らしているということではなく、かつて輸出を支えてきた高付加価値製品が台湾、韓国、あるいは中国によって時間をかけてキャッチアップあるいは追い越されていることが原因とみられる。円安が進んだからと言って簡単に挽回できるわけではないという現実が浮き彫りになっている。