交際相手から暴力的行為を受ける「デートDV」。デートDVは、夫婦間で起こるDVよりも認知度が低く、当事者たちもそれが「加害」や「被害」であることに気づかないケースも多い。令和2年度に内閣府が実施した調査によると、女性の5人に1人(20代では3人に1人)、男性の9人に1人が、交際相手から暴力を受けたことがあると回答している。
デートDVには「精神的な暴力」「経済的な暴力」「身体的な暴力」「性的な暴力」など、さまざまなタイプがあるが、最近注目されているのがデジタルネイティブ世代に特有の「デジタル暴力」だ。いったいどのようなものなのか。
被害者も加害者も「暴力」であることに気づかない
大学の学生相談室に勤務する女性相談員・Aさん(50代)は、学生からの相談依頼が年々増加していると話す。
「デートDVは、殴る、蹴る、叩く、つねる、噛むといったわかりやすい身体的暴力だけではありません。人前で『ブス』などと罵ったり、行動や人間関係を制限するなど精神的苦痛を与えるような精神的暴力、またデートのときに全額支払わせたり、高いプレゼントを要求したりする経済的暴力、そして同意のない性行為や避妊拒否、ポルノを見せるといった性的暴力もあります。
さらに、近年問題化しているデジタル暴力は、“暴力”と見なされない傾向があり、一層深刻です。たとえば、相手のスマホを勝手に見る、LINEの返信が遅いと怒る、自分以外の異性のアカウントをブロックさせる、位置情報共有アプリで居場所を常に監視する……、こういった行為もデジタル暴力に該当します」(Aさん)
実際、デートDVとは認識せず、恋人間のトラブルとして悩みを訴えてくる学生も多いという。
「私が勤務する大学では初年次教育の一環として、ハラスメントに関する講習をおこなっています。セクハラ、パワハラ、モラハラ、アカハラに加えて、最近ではカップル間のデートDVについても詳しく説明するようにしています。というのも、学生からの相談が年々増加しているからです。
相談室に問い合わせてくる学生たちは、それがデートDVのデジタル暴力であるという認識はなく、単なるカップルのトラブルと捉えていることがほとんど。SNSを常時監視し、投稿やフォロー、フォロワー関係に口を出したり、『なんで連絡くれないの?』などと一日中、連続してLINEを送りつけたり、性的な写真を送るように強要するといったケースがあります」(Aさん)