物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状況が続いている。厚生労働省が発表した今年2月の「毎月勤労統計調査(従業員5人以上)の確報値」によると、1人当たりの実質賃金は前年同月比1.8%減。23か月連続のマイナスを記録し、「過去最長」となった。そうしたなか、今年度から「初任給40万円」を導入して話題になっている企業がある。業務未経験者に支払われる月給としては破格に思えるが、なぜそのような基準を採用したのか。また、入社後はどんな「仕事」が待っているのか。話題のアパレル企業TOKYO BASE(東京都港区)の人事担当者にフリーライターの池田道大氏が聞いた。【前後編の前編】
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今年4月に入社した多くの新入社員に初任給が支給される時期を迎えた。民間シンクタンク産労総合研究所の「2024年度 決定初任給調査 中間集計」によると、2024年4月入社の大卒の初任給の平均は22万6341円で前年より4%ほど(8706円)増えた(調査対象3000社のうち4月12日まで回答のあった141社を集計)。初任給を「引き上げた」のは従業員「1000人以上」の企業で84.2%、「300〜999人」で79.5%、「299人以下」で62.7%だった(初任給を「据え置いた」のは17.0%、「引き下げた」企業はなかった)。
そんななか、「初任給40万円」を宣言して世間を驚かせたのがアパレル企業のTOKYO BASE だ。同社は2024年3月入社以降の社員から学歴、年次に関わらず初任給を一律で30万円から40万円に引き上げ、併せて全社員を対象としたベースアップを実施することを3月に公表した。
「初任給の引き上げには予想以上の反響がありました」——そう語るのは、TOKYO BASE人事部新卒採用/広報マネージャーの村瀬瑳映さん。
「様々なマスコミに報じられたこともあり、新卒採用の応募者は2〜2.5倍、中途採用の応募者は6倍ほどにアップしました。今年3月入社の新入社員は内定が出てから初任給は30万円だと思って準備を進めていたので、入社時に自分の給料が10万円も上がることを知ることになりました」(村瀬さん、以下同)