日本経済は長きにわたるデフレ不況に苦しみ、停滞期を過ごしてきた。だが、2023年は違う。年明け早々、大企業の経営トップが相次いで「異次元の賃上げ」を明言しているのだ。社員の待遇改善は企業の競争力の底上げから個人消費の促進まで様々な波及効果を生み出す。日本企業はついに動き出したのか──。
日本企業では今、かつてない大幅な「賃上げ宣言」が相次いでいる。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは今年3月から正社員(8400人)を対象にした賃上げを実施すると発表。初任給を25万5000円から30万円に、入社1~2年目で就任する新人店長の月収を29万円から39万円に引き上げるのをはじめとして、年収ベースで数%~約40%アップ。人件費は約15%増える見込みだという。
〈今回は特に、海外に比べて報酬水準が低位に留まっている日本において、報酬テーブルを大幅にアップする〉(プレスリリース)と理由を説明した。同社の30代社員が語る。
「正直、まだ賃上げについて聞かされていないので報道発表以外のことはわからないが、社内では大歓迎ムードですよ。特に入社1~2年目の若手社員は大喜びです」
ほかにも日本生命が今年4月から約5万人の営業職の給料を約7%増額し、キヤノンは現在の昇給制度とは別に全社員の基本給を一律に月額7000円引き上げる方針を発表している。
飲料大手・サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長も今年の春闘で「ベアを含め6%の賃上げを実現していきたい」と表明したが、サントリーグループの中堅社員は驚きを隠せない。
「組合の春闘議論報告書には、会社側から『高い賃金水準にある当社においては、成果の還元方法はベアに限らなくても良いのでは』という一次回答が来ているとあったので、新浪社長の『ベアを含めた賃上げ』発言には驚きました。若手社員は純粋に喜んでいるが、管理職は『6%も上がるワケないのでは……』と半信半疑のようです」