不動産不況に苦しむ中国経済だが、足元では回復期待が高まっている。香港株式市場はファンダメンタルズを重視する欧米機関投資家たちの売買動向によって影響を受けやすい市場だが、その香港市場全体の動きを示す代表的な株価指数であるハンセン指数の動きをみると、4月19日に底値を付けた後、急上昇しており、29日は6連騰を記録、約5か月ぶりの高値を付けている。急騰の要因として挙げられるのは、資本市場、不動産に関する政策だ。
資本市場については「ストックコネクト制度」を拡張
まず、資本市場に関する政策だが、中国証券監督管理委員会は19日、ストックコネクト制度(*注:一方の取引所を通して他方の取引所の金融商品を売買する制度で、ここでは上海、深セン市場と香港市場との間で行われている制度を指す)をさらに一歩進んで優れたものに拡張するための5項目の措置を発表した。
取引できるETF(上場投資信託)の対象を広げること、新たにREIT(不動産投資信託)を取引対象に加えることなど、金融商品の充実、取引の利便性を高める政策や、本土の有力企業、とりわけ業界トップ企業について積極的に香港市場への上場を当局が支持することなどが盛り込まれている。香港が国際金融センターとしての地位を固め、本土市場とともに香港の資本市場が発展することを積極的に促すことが趣旨である。
この政策が打ち出された背景には4月12日に国務院が発表した「監督管理を強化し、リスクを防ぎコントロールすることで資本市場の高い質の発展を推し進めるための若干の意見」がある。
これまで本土株式市場の発展を妨げてきた違法行為を厳しく取り締まるとともに、上場企業に対して投資家に報いる経営、資本政策、株主還元を強く促す政策が含まれている。実質的に株式の権益が強化される上に、企業がこれまで以上に経営効率を高め、利益の最大化を図るようになることが期待され、そうした観点からすれば、景気を経済主体の内側から押し上げようとする経済強化政策である。
買い替え促進「以旧換新政策」の対象には不動産も
次に不動産に関する政策だが、この業界にも以旧換新政策が実施され始めた。以旧換新政策とは、省エネ・二酸化炭素削減、DX(デジタルトランスフォーメーション)に繋がるような資本財や、自動車、家電といった消費財を対象とした「大規模な設備更新や消費財に関して買い替え行動を推し進める」ための政策だが、その対象に不動産も加わっている。
4月26日の21世紀経済報道などによれば2023年以来、40を超す都市で不動産の以旧換新政策が実施されている。徐州、シ博、南京などに加え、一線都市であり、市場規模の大きな深センでも今回、実施されることになり、不動産市場全体の回復への期待が高まっている。
各地方によって方法が異なるが深センの例を示すと、特定の仲介業者を通じて、新しいマンションを買う契約を行うと同時に所有するマンションの売却先を探すことが条件となるのだが、どうしても販売先が見つからない場合、90日以内であれば違約金なしで買う契約を破棄できるといった仕組みだ。ちなみに、2024年5月1日から2025年4月30日までの時限立法である。
このほか、買い替えを目的に購入契約を結ぶ顧客に対して不動産ディベロッパーが顧客の所有する不動産を買い上げるスキームや、政府が購入代金、売買契約にかかる税金などの一部を補填するといったスキームなどがある。各地方がその地方にあったやり方で政策が実施されている。