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【中学受験と塾選び】界隈を取材して感じる「なぜ共働き家庭がSAPIXを選択するのか」の疑問 難関校対策への強みと「親が大変」の評判

 フェリスは伝統的な難関校らしく、思考力問題という大人でも戸惑う難問を出す。2024年入試の国語では、祖父の趣味である登山について、祖父母や両親が話し合う内容の文章を問題文として出した。祖母や母親は「もう高齢だから登山は辞めてくれ」という。それに対して、中学2年の娘の立場で家族の意見をまとめる提案を200文字で記述せよという問題が出た。文章を読みこみ、論旨を組み立ててから記述していかなければならない。論理的な思考力が求められる。

 また、算数も思考力問題の良問を出す。解き方を暗記しただけでは対応できない難問で、高い応用力が必要となる。こうした思考力問題を出すのは男子御三家や渋谷幕張といった難関校が中心で、女子校でも桜蔭や豊島岡、フェリスの3校が容赦なく出してくる。

 そして、この思考力問題対策にSAPIXの学習指導は強い。ひとつの問題に対して複数の解き方を発見させていき、応用力を高めていく。そのため、最難関の筑駒の合格者の8割近くをSAPIXが占めるのである。フェリス対策にも力を入れており、小学6年の秋からはフェリスの志望校対策コースが開講される。

 つまり、SAPIXで頑張れば憧れのフェリスに近づけるわけだ。娘も「クラスの男子がうるさい。女の子だけの学校があるならそこに行きたい」と中学受験をすることに賛同をしてくれた。

 中学受験の新学期は小学3年の2月から始まる。SAPIXでは1月にクラス決めのテストを行い、A子さんの娘はαクラスに入った。SAPIXは最上位クラスがα1で、以下、α2、α3と続いていき、その下にアルファベットのクラスがあり、Aクラスが一番下となる。

 幸先がいいスタートを切ったA子さんの娘だったが、このあと、「夢を見た」代償を負うのだろうか。

 次回はA子さんとその娘の苦戦ぶりと対応を紹介する。

第2回につづく

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。

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