不動産需要回復に向けた地方政府ごとの政策
中央のトップダウンによる政策に加え、直接的に需要を回復させる政策が地方政府ごとに総花的に発せられている。
たとえば、杭州市は9日、「不動産市場コントロール政策の最適化調整に関する通知」を発表しており、この通知により、戸籍などによって厳しく課せられてきた購入制限が全面的に取り消されることになった。「認房不認貸」(過去に住宅ローンを組んだことがあっても、現時点で自分名義の不動産を持っていなければ、一件目住宅購入者とみなされ、優遇措置が受けられる制度)がさらに拡大され、市街地区に住居がないか、あるいは、所有していてもそれを売りに出しているような場合、一件目住宅購入者と同等とみなされるようになり、その上、所有者名義があれば、現地の戸籍を取得できるようになった(中国の大学は戸籍のある省・市・自治区ごとに人数を決めて募集するため、有名大学のある大都市圏での戸籍は教育上、大きな意味を持つ)。
内容は同じではないが、5月9日現在、西安、成都、佛山、東莞、アモイ、南京、蘇州など23の都市で購入制限が全面的に取り消されており、北京、上海、深センなどでは制限の一部が緩和されている。
米国内には中国の生産過剰を批判したり、半導体輸出規制を強化したりする動きもあるが、「もしトラ」が現実味を帯びつつある中、米国経済界の中には自分たちの利益のために今のうちに中国との関係を修復しておこうとする動きもあるようだ。
ハンセン指数は2018年1月に記録した過去最高値に対して6割に満たない水準だ。実績PER(5月13日)は11倍、国際的な比較や、これから景気回復局面を迎えるとの見通しを前提にすれば、十分割安な水準とみられる。資金流入がしばらく続く可能性もありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。