住まい・不動産

「隣の空き家が朽ち果てて困っています」撤去してもらうためにはどうすればよいか、弁護士が解説

 それでも管理不全状態が続き、特定空家になると、市町村長は所有者に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置を取るよう助言または指導します。改善されないときは勧告し、それでも正当な理由なく従わないときは、弁明の機会を与えたうえでこれらの措置を命じることができ、命令に従わなければ、行政代執行(強制執行)できます。

 こうした管理不全空家や特定空家の認定を受けるためには、市町村の独自の調査を待っているだけではだめで、空き家情報を役所に提供し、現地確認を求めることが必要です。

 その後は役所の判断になりますが、ご質問の場合、防犯上の懸念ですから、特定空家の要件のうち「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」にあるかが問題になります。

 認定には、悪影響の大きさと危険の切迫性が重視されるので、不審者情報などのほか、空き家の周辺住民の不安が大きいことが考慮要因になります。近所のかたを募って働きかけるのがよいと思います。

 役所の腰が重い場合、その隣家の敷地が市有地であることに注目しましょう。隣家の持ち主は市から土地を借りているとのことですが、10年以上も管理を放棄しているのですから、地代の支払いもないでしょう。市は賃貸借契約を解除して建物の取り壊しを請求できます。市に対し、こうした権利を行使して、地域住民に迷惑が及ばない市有財産の適切な管理をするように求めてはいかがですか。

【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2024年5月30日号

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