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職場の「子持ち様」批判は「内向き志向」「やりがい欠如」から生まれる 上司だからできる「部下の幸福感を高める」対策とは

職場の「子持ち様」批判を生む「内向き志向」

 それら多くの記事で分析されている通り、18歳未満の未婚の子供を育てる「子育て世帯」が全世帯の2割以下(厚生労働省調査)と少数派になり、子育てを経験したことのない人が以前より増えたことや、依然として賃金が伸び悩んでいるために結婚・出産を躊躇する人が増えたことも、社会で「子持ち様」をめぐる論争が起きる遠因かもしれない。

 そうした社会背景がベースにあるとして、では、職場における「子持ち様」問題にはどう対処すればいいのか。組織心理学が専門の山浦一保・立命館大学スポーツ健康科学部教授は次のように指摘する。

「子育て中の社員に対して『子持ち様』と揶揄したり、皮肉を言いたくなる感覚が生まれる背景には、まず企業の中での人手不足が挙げられます。一部社員の育休取得や時短勤務などに備えた人材確保はしにくい上に、利益を生むためにギリギリの人員で回している企業は、とくに中小の場合は子育て世帯をカバーするために、独身の社員などその他の社員にしわ寄せがいきやすい面があります」(以下同)

「そして……」と山浦教授がつけ加えるのが「やりがいの欠如」だ。

「自分のしている仕事に対してやりがいを見出せていれば、『子持ち様』のように感じる不公平感はそこまで大きくならないかもしれません。ただ、私たちはよい仕事をしたいと望んでおり、そのための職場環境は強い関心事です。その中で一部の、たとえば子育て中の社員が支援制度の利用で同僚が優遇されているように感じると、それを利用できない自分は不公平な立場にあると認識しやすくなります。この『割に合わない』感覚が直接恩恵を受けている身近な優遇者に向いてしまうようです」

 自分の仕事がどのように会社や事業に影響しているかや、ひいては社会にどんな役割を果たしているかが意識できないでいると、仕事はただの「作業」と化す。目の前のことを片付けることに終始するようになり、外に目を向けられない状態になる。すると、“隣の人”のことが気になってくる。関心が内向きになるのだ。

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