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職場の「子持ち様」批判は「内向き志向」「やりがい欠如」から生まれる 上司だからできる「部下の幸福感を高める」対策とは

上司だけができる「改善策」とは(イメージ)

上司だけができる「改善策」とは(イメージ)

「上司」だけができる改善策

 その状態を改善するには、子育て中の社員をカバーする人に企業として「金銭的な手当」をすることなどが必要だが、欠かせないのは「上司のフォロー」だと山浦教授はいう。

「リーダーが全体を俯瞰した上で業務の分担、采配をうまくやり繰りしていかなければいけない時代になったのだと思います。上司はそう理解して一人ひとりを十分にケアしていく。その上で『この仕事はこんな意味があって、あなたは会社に貢献してくれているんだよ』とやりがいの部分に気付かせるような声かけをしていくことです。

 社員が自分のやっていることには意味があって、誰かの役に立っていることが実感できるようになれば、仕事のミスが少なくなるというデータもあるくらい、大事なことです。目の前の仕事で手一杯な部下にこれを言ってあげられるのは上司だけです」

 視野が狭くなっている部下に対して客観的な視点を提供するのも上司の仕事というわけだ。業務時間内でも飲み会の席でも、タイミングを見計らって、未来の展望などを語ってもいいかもしれない。

 業務が細分化されて、「会社のため」や「世の中のため」が見えにくくなっている昨今だが、そうした「仕事の大義」と具体的な日々の業務を繋ぐ橋渡しができるのは、部下よりも経験が豊富な上司でしかない。

「部下のさまざまな事情を知って仕事の采配をすれば、その人たちの幸福感を上げることができる。そのポジションが上司という立場なのだと思います」

 仕事と家庭の両立を目指す子育て世代も苦しいかもしれないが、それを職場でカバーする側も同じように苦労を抱えている。自分の成果を出しつつ、部下もケアしなければならない上司は尚更だろう。誰もがしんどい思いをする以上、それぞれが少しずつ「お互い様」の労りを発動すれば、「子持ち様」批判が招く分断は乗り越えていけるかもしれない。

 後編記事では、職場で「子持ち様」への不満が生じる心理的背景と、それを放置することのリスクについて山浦教授に聞く。

後編につづく

取材・文/岸川貴文(フリーライター)

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